第41章 絶対的な『王』の名は
「?お前らも知ってるだろ?」
「あ…いや…えっと…」
「…まぁいい。長引いた抗争はどっちが勝ったとも言えねぇ…東卍と天竺の合併で手打ちとなって幕を閉じる」
「(東卍が天竺と和解した…?)」
「トップに佐野万次郎、ナンバー2に稀咲鉄太、ナンバー3に黒川イザナ。史上最悪の愚連隊が誕生した」
「あの…一つ聞いてもいいですか?」
「何だ」
「稀咲は既に死んでいます。なら稀咲がいなくなったナンバー2の席は空席のままなんですか?それとも別の誰かが?」
「……………」
素朴な疑問を投げかけてみると、大寿は訝しげに顔をしかめ、こう言った。
「本当に死んだのか?」
「え?」
「稀咲は本当に死んだのか?橘ナオト」
「…タケミチ君、カノさん。黒川イザナの事を調べました。黒川はどうやら警察に顔が利く」
「え?」
「黒川は予想以上の大物です」
「どういうこと…?」
「稀咲を"死人"にした。そうだろう?」
「!!」
大寿の意味深な言葉の真意を理解した。カノは"まさか…"と云うような焦り顔で狼狽える。
「殺人、傷害、窃盗…様々な嫌疑をかけられている稀咲を海外に逃がし、"死体"を用意して、それを"稀咲"に偽装した」
「そんな…バカな」
「じゃあ…稀咲は…」
「生きてます」
「(まさか稀咲が生きてるなんて…)」
「佐野は死んじまった。そして稀咲は海外。実質、今の東卍のトップは黒川イザナだ」
封筒の中に入っていたイザナの写真を手に取ったタケミチは信じられないと云うような顔と声で言う。
「こいつが…?東卍のトップ!?なんでこんな奴が…」
「わからない。ただ…佐野はイザナに龍宮寺堅以上の絶大な信頼を置いていた」
「ドラケン君より!?」
「っ、誰か来る…!」
誰よりも早く、人の気配を感じ取ったカノの言葉を聞き、タケミチ達は顔をそっちに向ける。
「これはこれは。元上司の二人がコソコソと密談か?くせぇな…」
「え!?」
「(青宗くんと一くん!?)」
部下を引き連れてやって来たのはイヌピーとココだった。タケミチは咄嗟にカノを庇うように背中に隠す。
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