第41章 絶対的な『王』の名は
「(アイツが…全部ぶち壊してた。私が息苦しい世界で生きる事になったのも…兄さんの死も…万次郎くんの死も…全部あいつのせいだったんだ───。)」
そう思うと心の奥底から今まで感じた事もない激しい感情がブワッと湧き上がった。それが怒りだと知り、顔を歪めてギリッと歯を噛み締める。
「許さない…絶対に。自分にとって都合の良い東卍を創る為に二人の命を何度も弄びやがって…。今度会ったらアイツを殺…」
「ストップ」
「!」
言葉が最後まで続く事なくタケミチに止められる。ふと彼を見ると少し怒ったような顔でカノトを見ていた。
「その続きは人の命を救う側のオマエが言っちゃダメな言葉なんじゃねーの?」
「……………」
「カノちゃん」
優しく咎めるように名前を呼ばれ、頭に血を昇らせていた自分を落ち着かせる。目を瞑り、深呼吸するように息を吸って吐いてを二三度繰り返す。
「そうだね、ごめん。頭に血が昇った。タケミチくんの言う通りだ。看護師なのに、人の命を軽んじる発言は控えなくちゃね」
「でも…オマエの気持ちも分かるよ。というかオレが言えた義理じゃないんだ。オレもオマエみたいに稀咲を許せなくて、すげぇ怒りが治まらなくて焦ってたら、千冬に両頬ぶにって引っ張られた」
タケミチは千冬がしたように自分の両頬を両手で引っ張った。すると変な顔になり、思わずカノトが吹き出してしまう。
「そうそう。そうやって笑ってなきゃな!カノちゃんは笑っても美人なんだから!」
「ふふ、ありがとう。本当に君はたまにカッコよく見える。いつも弱々しく見えるのに今みたいにふと真剣な顔で怒ってくれてさ」
「"たまに"は余計じゃない??つーかそこまで弱々しく見える!?オレだってこれでもナメられねーように頑張ってんだけど!?」
「現代(みらい)での君を見てるからね」
「それを言われたら何も反論できねぇ…」
がっくしと肩を落とし、"トホホ…"と涙を流すタケミチにクスリと笑う。
「(今度こそ、取り戻したい。兄さんや万次郎くん、みんなが幸せそうに笑って暮らせる世界を。稀咲にも…二度と壊させない。)」
「大丈夫だよ、カノちゃん」
「え?」
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