第41章 絶対的な『王』の名は
「まさか彼が心に深い闇を抱える事になったきっかけが…稀咲だって言うの?」
驚いた顔をタケミチに向ける。
「マイキーくんにとって稀咲は必要な存在だった。だから稀咲が東卍を抜けたから12年後、マイキーくんはあんな風になっちゃったって事…?」
「12年で人ってあそこまで変わらないだろ?それこそ何かきっかけがない限り。マイキー君の場合、必要だった稀咲がいなくなっちまったから、心に深い闇を抱える事になって、12年後あんな風になったんだって思ってた」
「……………」
あまりの事実に言葉が出ない。
「だから未来が変えれなかった事をそうやって納得した。でも違ったんだ。マイキー君は稀咲を必要とするワケないし、なにより、"オレの東卍を創る"ってずっと一貫してるんだ」
「って事は…稀咲は私達みたいに何度も未来から来て、東卍を自分好みに創り変えてるって事?」
「そう考えると何度も繰り返しても失敗するのも納得がいくだろ?」
「稀咲が…私達が今まで必死になって直したモノを、その度に全部壊してた。兄さんとマイキーくんが"幸せになるはずだった世界"を壊したのも…稀咲…」
「カノちゃん…」
マドカが死んで以来、暖かかった世界が"息苦しい世界"へと変わった。毎晩夢に見る、マドカの死。寝不足で目の下に隈も出来た。マドカがいなくなった世界で生きる事が辛い日もあった。でも現代(みらい)を変えて死んだはずのマドカが生きていると知った時、漸く暖かな世界が戻ってきたと思って嬉しかった。
フィリピンで会ったマイキーに再会した時も同じだった。大好きな人が同じ現代(みらい)で生きている。涙で視界がぼやけて上手く喋れなくなってしまうほど嬉しかった。それなのに『最悪な未来』を回避できなかった。自分が愛した男は"愛してる"と言い残して、その世界を去ってしまったのだ。
何故、現代(みらい)は良くならなかったのか。自分達が今まで必死になって直したモノが、何故…こうも容易く壊れてしまうのか。
その原因を作った男がいたからだ。そいつが未来を改ざんしたせいで『最悪な未来』が創られてしまったのだ。稀咲───自分にとって理想の東卍を創る為に自分達が変えた未来を更に創り変える男。だから何度繰り返しても失敗する現代(みらい)になるのだ。
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