第56章 彼の運命
「オマエを庇ったせいじゃない…」
「…………っ!」
「タケミっち、カノ、自分を責めるなよ?オマエらが過去(ココ)に戻ってきたせいじゃねぇかんな」
「(血が…止まらない…っ!)」
「オレはオレの意思でここまで来た。オマエらにもらった命…オマエらの為に死ぬんだ」
「ドラケン君…」
「わかったな?」
「はい…」
微笑みかけるドラケンの言葉に、涙ぐんだ顔で頷いたタケミチ。
「カノ…ありがとな」
「何で…そんな台詞言うんです。まるで、もう…会えないみたいな言い方じゃないですか」
「看護師なんだから、分かるだろ…。血を流し過ぎた。オマエがどんなに止血を頑張ったところで…オレはもう助からねぇ」
「そんな…こと…」
本当は分かっていた。彼の言う通り、どんなに出血を止めた所で、たくさんの血を流し過ぎている。これだけ血の量が人間の体内から流れたら…その人の最後くらい、簡単に想像できるのに。
「ドラケンくん…」
「オマエを死なせなくて良かった」
「!」
優しさを含んだその言葉を聞いた途端、視界がぼやけ、くしゃりと顔を歪めて、泣き声を洩らす。
「う…うぅ…あ…あぁ…あ…っ」
「マイキーには…オマエが必要なんだ。今はアイツの心は離れちまってるが…オマエらは絶対に一緒にいなきゃダメなんだよ…」
「ひっく…うぅ…」
「アイツは…オマエを拒絶して突き放した。けど…あのカノ一筋のマイキーが…自分から大事なモンを手放すなんて出来ねぇんだ…」
ドラケンは、マイキーがどれだけカノトのことを大事にしてきたか知っている。だからこそ、あれだけベタ惚れだったマイキーが、自分からカノトを手放す事は出来ないと確信していた。
「なんだかんだ…アイツはオマエのことが大好きだからな」
「ドラケン…くん」
「マイキーにはオマエしかいないんだ…。喧嘩しかしてこなかったアイツが…オマエに出逢ったことで変わった。オマエの存在は…アイツの生きる理由そのものなんだよ」
「!」
「何があってもアイツを見捨てないでくれ。ずっと傍にいてやってくれ。そんで…二人で幸せになれ。約束してくれるか…?」
「はい…っ!」
.