第56章 彼の運命
涙で濡れた顔で頷いた。
「…タケミっち、カノ。オレはな、アイツが大好きだ」
次第にドラケンの言葉が苦しそうに吐き出され、虚ろな眼で呼吸をし始める。
「アイツの全部背負い込んじまうとこも、そんでも何とかしちまうとこも全部…アイツの背中を…見て…きた…」
吐血し、咳き込みながらも必死にマイキーのことを二人に伝える。
「だからオレがどうにかしてやりたかった」
「ドラケン君…」
「なあ…?タケミっち…カノ…一個だけ…ダセェ事…言っていいか?」
「…はい」
「マイキーを頼む」
「……、はい!」
涙を滲ませるドラケンの最期の言葉をしっかり聞き入れた二人は、強く返事をした。
◇◆◇
数時間後、トリニティランド第三駐車場にて。
「あ"あ"あ"ぁぁぁ……っ」
止まない雨が降り頻る中、声にならない叫びを上げたカノトが地面に座り込み、顔を両手で覆って泣いていた。
その側ではタケミチがぼう然と佇んでいる。
「花垣…」
千咒が声を掛けるも、名前を呼ばれた事にすら気付いていないタケミチは、数時間前のやり取りを思い出していた。
『タケミチくん!救急車が来たよ!』
救急車が到着し、担架で運び込まれるドラケン。
『助かりますよね!?』
『お願いします!!助けてください!!』
『残念ながら…もう…亡くなっています』
救急隊員からドラケンが既に死亡している事実を伝えられた二人はショックを受け、言葉を失った。その直後に、カノトが悲鳴に近い叫び声を上げ、地面に座り込んだ。
「花垣!!」
ビクッ
「え?何?」
「これからどうする?カノトもずっと泣いてるし、とてもじゃないけど話せる状況じゃねえ」
「……………」
「花垣?」
「…あ、ゴメン、なんだっけ?」
「花垣…」
千咒がタケミチに話し掛けるも、突然のドラケンの死により上の空のタケミチは、まともに会話ができない状況だった。
「ヒック…ドラケンくんが…っ、ドラケンくんが死んじゃった…っ、う"…あ"…あ"あ"あ"…っ」
ドラケンの死を受け止めきれず、ショックと悲しみで体が震えるカノト。
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