第56章 彼の運命
「やっぱりあの時撃たれてたんですね!?」
急いで着ていた上着を脱ぎ、それを出血している箇所の上から体重をかけて押さえ付ける。
「僕が…僕なんかを庇ったから…っ」
「千咒!!従業員の人呼んできてくれ!!ドラケン君を運ぶから担架も!!」
突然の事態に驚くも、千咒は頷いて従業員を呼びに走った。タケミチはすぐに救急車に電話を掛け、ドラケンの元に駆け寄る。
「カノト!ドラケン君の容態は!?」
「…3箇所も撃たれたんだ、出血が多過ぎる。これだけ血を流してたら助かる可能性は…」
「嘘だろ!?何とか助けられねぇのか!?」
「僕は医者じゃないからこの場で適切な処置を行う事も出来ない。こうして服の上から出血を止める事くらいしか…」
悔しげに歯を噛み締め、血で濡れた手で出血を止める事しか出来ない自分の無能さに苛立つカノト。
「(また救えないの…?兄さんの時も、場地さんの時も、エマちゃんの時も…何も出来ずに死なせてしまった。)」
「ドラケン君、ドラケン君!」
「!」
意識が朦朧としていたドラケンだったが、タケミチの呼び掛けに気付き、虚ろな目を向ける。
「今、救急車呼びました。千咒が従業員に担架頼んでます。大丈夫ですよ、絶対に助かります」
「……………」
「ドラケンくん、しっかりしてください!」
無理やり笑顔を作るタケミチの手が震えている事と、自分を見るカノトの声が涙声になっている事に気付いたドラケンは、自分の身に置かれている状況を知った。
「そっか…オレは、死ぬんだな…」
自らの死を悟ったドラケンの言葉に、我慢していた涙がぶわっと溢れ出すタケミチ。
「いいえ、いいえ…っ!絶対に死なせません!僕が絶対に助けます!助けますから…っ!」
「……………」
「もう嫌なんです!目の前で大切な人達が死ぬのは!もう…っ、十分なんです!ドラケンくんまで死んでしまったら、僕は……っ」
ポロポロと涙が流れる。
「僕を庇ったせいでドラケンくんが死んでしまうかもしれないのに…!!」
「カノト…」
「ごめんなさい…ごめんなさい…っ」
ドラケンが撃たれたのは自分のせいだと激しく責めるカノト。
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