第56章 彼の運命
「だからって銃なんか使って…」
「三天戦争はもうガキの喧嘩じゃ済まないのかもしれない。金や利権が絡んで、みんな目の色が変わってやがる」
ドラケンは三天戦争前の現状の危うさを言及する。
「この先どうなっちゃうんスかね…」
「…"マイキー(あいつ)"はこうなる事を見越してたのかもしれないな…」
「ドラケン君。ここだけの話…オレ…少し先の未来が見えるようになったみたいです」
「!!」
「見えた未来では、ここでオレを庇って千咒が死んで、カノトも銃で撃たれて死ぬはずでした。その最悪な未来は防げた」
「ドラケンくんが僕を庇ってくれたおかげで僕は自分の死を回避することができたんです」
「?何ボソボソ喋ってんだ」
少し離れた場所で喋る三人の会話が聞き取れず、千咒は疑問符を浮かべる。
「ドラケン君のおかげです。これで一つ未来が変わりました!」
「………、そうか…よかった」
微笑んだドラケンの様子に、カノトはどこか違和感を感じた。
「(何だろう、この感じ…。最悪な未来は防げたはずなのに…嫌な予感がする。)」
「オイ、ジブンらも逃げねぇと!人が来たらややこしくなる」
「ああ、そうだな」
千咒の提案に頷き、走り出すタケミチ。
「あの、ドラケンくん」
「…どうした?」
「さっき…本当に何処も怪我してないんですよね?」
「……………」
不安そうな声で尋ねると、ドラケンは小さくふっと笑い、視線だけをカノトに向ける。
「カノ」
「(あ…この感覚、知ってる。兄さんや場地さんの時にも感じた…"嫌な胸騒ぎ"。)」
「マイキーのこと、頼むな」
「(まさか…)」
ドクンッと心臓が嫌な音を立てる。
「ドラケン君?」
「武道…マイキーに言っといてくれ」
「え?」
「あんまり…世話…焼かせんな…ってよ」
「何言ってんすか!?自分で…」
タケミチの言葉は、ドラケンがその場に倒れたことで遮られた。
「オレはここまでだ」
「ドラケンくん…!!」
仰向けで倒れたドラケンの服には、銃で撃たれたと思われる赤い染みが広がっていた。
.