第56章 彼の運命
返ってきた言葉は意外とあっさりしていた。思っていた反応と違ったタケミチは、驚いてカノトを見つめる。
「反応薄くない?もっと怖がると思ってたんだけど」
「死ぬかも知れないって聞いて、自分でももっと動揺するかと思ったんだ。でも…何だろう。"死ぬのが怖い"っていうよりは、"こんなところで死ねない"っていう気持ちの方が先だった」
「ハハ…何だよそれ」
真剣に悩んでいたのが馬鹿らしく思えたのか、タケミチは可笑しそうに笑いを零した。
「そうだった、オマエはそういう奴だったよ。この程度で怖がるタマじゃないもんな。オレが知ってるオマエは…心がすげぇ強いんだ」
「褒め過ぎだよ。過去に来たばかりの僕だったら死ぬのが怖いって泣いて震えてた。でも、君やマイキーくん、東卍のみんなのおかげで変われたんだ」
過去を変えても結局は誰かが死ぬ未来に何度も心が折れて泣いた時もあった。でもそういう時には必ず支えてくれていた人達がいた。弱っていた心を癒してくれた。いろんな出来事を経験して心も強化されていった。それは全て過去に来たからこそ手に入れた強さだった。
「なぁカノちゃん」
「ん?」
「絶対マイキー君を救おう」
「千咒もね」
「ああ!」
「ところで千咒が死ぬ場所ってどこなの?」
「あ!しまった!」
タケミチは慌てて椅子から立ち上がる。
「千咒が襲われるのこの遊園地なんだ!」
「え!?どうしてそれを早く言わないの!」
「目ぇ離すべきじゃなかった!千咒!!」
「待ってタケミチくん!」
飛び出すようにフードコートを出て行ったタケミチの後を追いかけるようにして、カノトも雨降りの中、トイレに行った千咒を探す。
「あった!」
「!」
遊園地内のトイレに到着した二人。カノトが近くに飾られている笹に吊るされた千咒の短冊を見つける。
【花垣とカノトを守る!!!】
「(私達を守るのが千咒の願い。そして今日、千咒は何者かの手によって殺されてしまう。)」
ドクンッ
「(……まさか。)」
「どうした?」
「タケミチくん…まずいかも」
「え?」
全てを知ったカノトが焦り始める。
.