第56章 彼の運命
「……………」
「ん?どうした花垣。全然食べてねぇじゃん」
「…あ…うん」
「食欲ないの?」
「そういうわけじゃ…」
「ちょっとトイレ行ってくる!」
「……あぁ」
「気をつけてね」
その場を離れた千咒の言葉に、上の空で返事をするタケミチ。その様子をカノトは飲み物を飲みながら見つめている。
「(どうする…?あれがホントに未来視なら、今日ここで千咒とカノちゃんが死ぬ…)」
「……………」
「(遊園地で…?誰かに襲われるとか…?…たしか千咒は頭から血を流して…カノちゃんは胸を撃たれて…)」
「タケミチくん」
「!え、何…?」
静かに名前を呼ぶと、ハッとした顔でタケミチがこちらを見る。
「深刻そうな顔してる」
「……………」
「僕にも君の抱えてる悩みを背負わせてよ。何のために君と一緒に冒険してると思ってるの」
「…勇者様は相変わらず聡いよな。出会った時からカノちゃんにはオレの考えてる事とか全部筒抜けだもんなぁ」
「友達の変化くらいすぐ気付くよ。それで…上の空で返事をするほど何を悩んでいるの?」
「…未来を見たんだ」
「!」
「けどその未来視がオマエにとって良くねぇって言うか…」
「なるほど…僕に関する未来を視たんだね」
一度椅子の背もたれに背を預け、ゆっくりと瞼を閉じて何かを考え込んでいるカノト。
「だから知らない方が…」
「言って」
瞼を開けたカノトは真剣な表情と眼差しをタケミチに向ける。
「え?」
まさか話す事になるとは思っていなかったタケミチはカノトの言葉を聞いて、困った顔を浮かべた。
「本当にいいのか…?」
「それが例え最悪な未来でも、僕には知る権利がある。大丈夫、ちゃんと受け止める覚悟は出来てるよ」
「…分かった、話すよ」
カノトの覚悟を知ったタケミチは、さっき自分が見た未来視を話す事にした。
「カノちゃんが死ぬビジョンを見た…」
「!!」
「胸を撃たれて…血を流してたんだ」
「……そう」
「そうって…」
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