第56章 彼の運命
7月7日という事もあり、大きな笹の葉に飾られた短冊がたくさん吊るされている。
「願い事〜♪願い事〜♪」
「せっかくだし、僕達も書こうか」
短冊を貰い、願い事を書くことにした。
「(願い事か…)」
もし本当に織姫と彦星が願いを叶えてくれるなら、叶えてほしい願いは短冊に書ききれない程たくさんある。
「(でも…今、私が願うのは───。)」
カノトはペンを持ち、短冊に願い事を書き込んでいく。
「なんて書いたんだ?花垣。」
「ん?」
千咒の隣で短冊を書いていたタケミチの願い事は【マイキー君をぶっ飛ばす!!】だった。それを見た千咒は可笑しそうに笑う。
「ハハ、単純な奴!」
「うっせーな、これからのやる気を書いたんだよ!!」
ちょっと小馬鹿にされたのが悔しかったのか、タケミチは少し照れながら千咒に怒った。
「カノトは?なんて書いたんだ?」
千咒がひょこっと隣から顔を覗かせて、カノトの短冊を見る。
【愛する人がちゃんと帰るべき場所に帰って来られますように。】
「帰るべき場所?」
「僕との繋がりを断ち切った今のマイキーくんには帰る場所がない。だから彼の全てを救って、"貴方の帰る場所は私のところだよ"ってことを、もう一度あの人に伝えたいんだ」
「……………」
「織姫様と彦星様が力を貸してくれるといいな」
マイキーの帰る場所はいつだって自分のところだった。けれど完全に決別した今、独りぼっちで生きている彼には帰る場所がない。だからこそカノトは七夕に願いを込めた。
愛する人がもう一度、自分のところに帰って来てくれることを───。
「叶うに決まってる!」
「!」
「オマエは良い奴だからな!きっと織姫と彦星がオマエのところにマイキーを帰してくれる!だから心配すんな!」
「ありがとう、千咒。ところで千咒は短冊にどんな願い事を書いたの?」
「ホレ」
千咒が二人に短冊を見せる。
【花垣とカノトを守る!!!】
「シシシ」
「(真っ直ぐな子だな。)」
「ありがと」
「千咒の願いもきっと届くよ」
「こういうの初めてでさ…"友達"って思ってもいいか?」
.