第56章 彼の運命
《そっか…。なら待ち合わせ場所だけど…》
タケミチから集合場所を聞いたカノトは、通話を終えた後、すぐに支度をしてマンションを出た。
◇◆◇
「相談があるって言うから出てきたのに…」
「此処に来たかったの?」
「うん!ずっと来たかったんだ」
千咒に誘われて着いた場所は夜の遊園地だ。
「わーーすげえキラキラ!小2以来だワー!」
「(はしゃぐ姿はやっぱり普通の女の子。)」
「つーか、せっかく服いっぱい買ったのになんで梵の特攻服(トップク)なんだよ?」
「結局コレが一番動きやすくて。ジブンはカノトの女の格好が見たかったなー」
制服姿のカノトを見て千咒は残念そうな顔を浮かべている。
「なら今度一緒に出かけた時に見せてあげる」
「ホントか!?」
「だから千咒もこの前買った服着てね」
「分かった!約束だぞ!」
「うん」
パッと笑顔になった千咒を見て、カノトも笑みを浮かべて頷いた。
「なぁ!観覧車乗ろー!」
「最初に観覧車?」
「いいじゃん、乗ろうよ」
そうして三人は観覧車に乗り込む。
「うおー!!すげえ高ぇぞ花垣、カノト!!」
「ハハ、子供かよ」
千咒は興奮したようにテンションが上がり、タケミチと反対側の席に座っているカノトは、窓から見える景色を見ながら静かに呟く。
「昼間と違って、たくさんの明かりが夜の遊園地を包み込んでて、上から眺めるとキラキラ輝いてて綺麗だね」
「あれ?昼間は誰かと来たことあるの?」
「…うん。好きな人と一緒に。」
「!」
「(着いてすぐジェットコースターに誘われて、それからお化け屋敷で脅かされて、最後に観覧車に乗ったんだよね。)」
マイキーと過ごした思い出が甦り、懐かしさで顔が緩むが、同時に寂しさを感じ、膝の上に置いていた手をギュッと握りしめる。
「カノちゃん…」
「次は何に乗ろうか」
心配するタケミチに軽く笑いかけ、一周し終えた観覧車の扉が開き、三人は降りた。
「ねぇ二人とも、短冊があるよ」
「短冊?」
「あー今日って七夕か…」
「行ってみようぜ!」
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