第55章 明司兄妹
「武臣さんと随分親しいんだね」
「武臣?」
「明司武臣、梵ナンバー2。親しいって程じゃないけどたまに口うるせー時あるからウンザリしてる」
「(ナンバー2だったのかあの人…)」
「梵みんなオッサンだから同い年が入ってうれしー」
「(中身は二人とも26歳なんだけどね。)」
そんな事は口が裂けても言えないので黙っておくことにした。色々見て回るうちに気になった店を見つけたのか、千咒は嬉しそうに近付く。
「わー!!コレカッケ!!入ってみようよ!」
「ちょ、ちょっと待ってよ!ヤバそうな店だよ!?あっちにしようよ!!」
「そうだよ千咒!店に入ったが最後、高い金額で買わされる羽目になるよ!?」
「えー…」
「(だって店の店員がスキンヘッドだよ!?売ってる服も奇抜的だし、絶対千咒には似合わない!!)」
不服そうな顔をしていた千咒だが、二人の必死さに仕方なく諦め、次の店に行くことにした。
「…コレほんとに可愛いのか?すげぇ露出だぞコレ」
「こっちの方が千咒に似合ってるよ。ね、タケミチくん?」
「うん!似合ってる。女の子ってカンジ」
上下黒のトップスとスカートを身に付けた千咒は、普段着ないような服装に違和感を感じている。
「すげぇ動きやすいのはいいネ。ほっ。」
「ちょっダメだよパンツ見えちゃうよ!?」
「タケミチくん…ヒナちゃん以外のパンツを見る気じゃないよね…?」
「ひっ!?め、滅相もないです勇者様…!!」
千咒が少しでも大きな動きをすると見えてしまうスカートの中。タケミチは慌てて千咒を大人しくさせようとしたのだが、低い声で目をギラつかせたカノトにビビり、小さく悲鳴を上げる。
「ほら千咒、あまり派手に動き回るとスカートの中が見えちゃう」
「さっきのがカッコよくね?」
「ウン…なんかアレだね…」
「よし!次はカノトの服も見よう!オマエに似合いそうなのきっとあるぞ!」
「いや僕は…」
「というか普段は女の格好?男物の服着たりするのか?」
「普段は男物を着ることが多いよ。女の格好する時はいつも…」
いつも──マイキーと会う時だった。でも今はもう女の格好をする事も女物の服を着る事もなくなった。
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