第55章 明司兄妹
「タケミチくん遅いな」
「ごめんお待たせ!!」
「大分待ったぞ花垣」
「!」
「行くぞ」
「ン?誰?カノトの知り合い?」
少し遅れてやって来たタケミチはセーラー服の女の子がいる事に驚いた顔を浮かべている。
「彼女とは昨日も会ってるよ」
「え?」
「…本当に分からないなんて」
「だから誰!?」
「なんだよヒデぇなぁ千咒だよ!昨日約束したろ?」
「えぇー!!!?女の子だったの!!?」
「ウルサッ」
近くで叫ばれ、片耳を手で塞ぐ。千咒が女の子だった事に驚きを隠せないタケミチは開いた口が塞がらない様子だった。
「…そうだよワリぃか?うるせぇ奴だな」
「…いやだって…梵のトップだよ?」
「そういうのいいからさ、行くぞ!」
「早く来ないと置いてくよ」
「えー!ちょっとちょっと!」
先に歩き始めた二人を慌てて追いかける。
「女の子で三天の一角!?すげぇ!!!」
「まじうっせぇ」
「タケミチくんテンション高い」
「高くもなるよ!つかオマエは知ってたのか?千咒が女の子だって」
「さっき知った。ついでに僕が女である事も彼女は最初から分かってたみたい」
「え!?完璧な男装のカノちゃんの正体を一発で見破ったのか!?」
「見破ったっつーか、昔から知ってるだけ。ガキの頃に何度かコイツの兄貴に会った事があって、その時に写真で見せてもらったんだ」
「兄さんと会ったことが?」
「向こうは憶えてないかもしれないけどな」
千咒は少し寂しげに言った。
「これから何処に行くの?」
「とにかく"原宿で買い物"。武臣が『たまには女らしい事しな』って言うから。コレ、アイツのカード」
「ブラックカードだ…!」
「カノトの服もコレで買ってやる」
「え、それは悪い気が…」
「気にすんな。さっき落ち込んでたし、新しい服買ってパァーっと気分転換しよ!」
「落ち込んでた?」
「……………」
千咒の言葉に引っ掛かりを憶えたタケミチが、困った顔で笑っているカノトを見る。その顔を知っているタケミチはすぐにマイキー関係だと分かり、それ以上深く追求しなかった。
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