第55章 明司兄妹
「今日からオマエは"荷物持ち"だ」
「へ?荷物持ち?」
「明日、昼の3時に"原宿"集合な!あ、もちろん宮村も来るんだぞ!」
「え?僕も?」
「花垣よりオマエの方が役立ちそうだからな!」
「ヒドくない!?」
無邪気な顔で失礼なことを言った千咒の言葉にタケミチはショックを受ける。
「エスコートしろよ勇者様!」
「その呼び方はちょっと…」
「だって勇者っぽい顔してるし」
「どんな顔!?」
ニコニコと笑う千咒に距離を詰められ、何が何だか分からない二人は戸惑った。
「気に入られたな二人とも。
これから大変だぞー」
「へ?」
「大変?」
明司の言葉の意味を理解出来ないまま、とりあえず二人は明日原宿に向かうことになった。
◇◆◇
次の日───原宿。
「待ち合わせした時間より早く着いちゃった」
原宿駅に到着したカノトは携帯で時間を確認する。賑わう人々で溢れる原宿の街を見ながらカノトはドラケンから預かったマイキーのネックレスを手に取って眺める。
「(万次郎くん…)」
「そのネックレスがどうかしたのか?」
「え!?」
急に声を掛けられ、慌てて振り返ると、そこに立っていたのはセーラー服を着た女の子だ。
「えっと…もしかして梵の…?」
「自己紹介しただろ。瓦城千咒。」
「お、女の子…だったんだ」
「何驚いてんだ?オマエだって女だろ?」
「!」
「しかも宮村望の妹。こうして見ても全然似てねーんだな。オマエの方がカッコイイ。」
「あ、有難う…」
驚きつつも褒めてくれた事にお礼を言う。
「そのネックレス、マイキーのか?」
「…コレ、マイキーくんに突き返されたの。あっても邪魔だからって。僕のとね、ペアなんだ。でも…彼にはもう必要ないみたい」
「……………」
悲しそうに笑うカノトを見ていられなかった千咒はガシッと両手を掴む。
「よし!!今日はオマエの買い物にも付き合う!!」
「買い物?」
「だから元気出せカノト!!」
「!有難う、千咒。」
自分を励まそうとしてくれる千咒の気遣いにカノトは嬉しそうに笑った。
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