第55章 明司兄妹
「花垣武道…オマエは二大チームが見守る中で高々とこう見得をきった。"佐野万次郎をぶっ飛ばす"」
次に千咒の視線がカノトに移る。
「そして宮村心叶都…オマエも揺るぎない決意でこう見得をきった。"『間違った道』に進んだマイキーを叱ってやる"」
「はい」
「その志が本物なら梵(ウチ)に入れ。梵はオマエらを歓迎する」
「(仲間集めは失敗したし、他にあてがあるわけでもねぇ…)」
「(万次郎くんを正しい道に引き戻すには、もしかしたらこれが最短距離なのかも…)」
二人は横目で視線を合わせた後、頷いた。
「ふざけんな!!どうしても二人を入れようって気ならオレは梵の敵になるぞ!!」
「じゃあ、ここで殺りあうか?」
怒りが抑えきれないドラケンに、千咒はギロッと鋭い睨みを利かせ、殺気を放つ。
「ドラケン君」
「僕達は梵に入ります」
「は!?」
「ドラケン…梵は関東卍會を潰したい。けどマイキーとモメたいワケじゃない…」
明司がドラケンを諭すように言う。
「だからマイキーが心から信頼しているオマエと花垣と宮村がどうしても仲間に欲しい。特に宮村はマイキーのお気に入りだった。コイツがいれば状況が変わるかもしんねぇ」
「……………」
ドラケンは眉を顰め、納得がいっていない様子だった。
「できる事ならモメずに説得したいんだ。わかってくれ」
すると降り続いていた雨が止んだ。
「あ、雨がやんだ」
「…はぁ、まぁ…他でもねぇタケミっちとカノだ…。オレらと梵は利害が一致しただけの仲間だ」
「はい…」
「それを忘れるなよ」
さっきの表情とは打って変わり、和らいだ笑みで手を差し出す。
「梵にようこそ。カノ、タケミっち」
二人はドラケンの手を取る。
「オレが絶ッ対ェマイキー君を悪の道から連れ戻します!!」
「僕も独りでいる事に慣れてしまったマイキーくんの離れた手をもう一度繋ぎ直します!!」
その強い意志にドラケンは笑みを浮かべる。
「よし!そうと決まったら、これを花垣。」
「?傘?」
千咒から傘を渡され、不思議そうな顔をするタケミチ。
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