第55章 明司兄妹
「送ってくれて有難う」
「ゼファーの乗り心地最高だったろ」
「うん」
「…お前さ、東卍のメンバーだったんだな」
「黙っててごめん」
「別に怒ってねーよ。ただビックリはしてる。お前みたいな真面目そうな奴が不良やってるなんて意外だったわ」
「…僕のこと怖くなった?」
「え?何で?全然怖くねーけど?」
ゼファーに跨った陽翔は沈んだ表情で言うカノトの言葉に対してキョトンとして首を傾げている。
「だってお前イイ奴じゃん」
迷う事なく答えた陽翔にカノトは目を見開く。
「俺、お前とは中学からの付き合いだけどさ、これでもお前の良いところたくさん知ってんだぞ」
「僕の良いところ?」
「赤点ばっか採る俺を見捨てず遅くまで勉強に付き合ってくれるだろ?悩める女子共の相談にも嫌な顔一つしないで真剣に聞くだろ?俺みたいな奴と高校入っても仲良くしてくれるだろ?んで、友達思いで困ってる奴がいたら迷わず助ける」
指を折りながら自分の良い所を数える陽翔にカノトはまた驚いた顔を見せる。
「あとお前は…一つの事に一生懸命だ」
「!」
「きっとお前の中に揺るぎない信念みたいなモンがあって、それを成し遂げるまでは絶ッ対ぇ諦めない強さを持ってる」
「(彼がそこまで私のことを見ていてくれてたなんて…)」
「だから例えお前が暴走族だろうが不良だろうが関係ねぇ。俺はどっちのお前でもない"宮村心叶都"を好きになったんだ。それに親友を怖がるなんて死んでもありえねーから安心しろよ」
「…ふっ…はは…っ」
「今の笑うトコ??」
「いや…なんて言うか…」
カノトは可笑しそうに、でもどこか嬉しそうな顔で小さな笑いを零し、陽翔を真っ直ぐ見る。
「君は良い奴だなっと思っただけ」
「オイオイそんな褒めんなって」
「(満更でもなさそう。)」
「つか宮村って喧嘩できんだな!あのサウスって奴にも怯む様子なかったし、むしろ立ち向かう姿に勇者の面影を見たわ」
「!」
「普通ビビるだろ、あんな殺気バチバチの相手に凄まれたら。なのにお前は睨み返すしさー、怖いもの知らずかよってなんか尊敬した」
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