第55章 明司兄妹
「さぁ!!第2ラウンド決め込むか!!!」
「ヴィィィヴォ(あがるぜえ)!!」
一触即発の雰囲気が流れ始めた時、遠くからパトカーのサイレン音が聞こえた。
「警察!?」
「こんなど真ん中でずっと道塞いでりゃ交通にも影響は出るよ」
「…ちっ。楽しみはまた今度だドラケン」
「サウス!!オレの全ては東京卍會に置いてきた!!!六破羅には入らねぇぞ!!」
「………。いくぞテメェら撤収だぁ!!!」
ドラケンの言葉に応えず、サウスは仲間を引き連れてその場を去って行った。
「(やっぱりドラケン君は変わってない。心はいつでも東卍にあるんだ。)」
「(とりあえず最悪の事態は免れた。…彼に怪我を負わせずに済んで良かった。)」
カノトは安堵の表情を浮かべた。
「お、終わった…のか?」
「うん。もう大丈夫だと思う」
「はぁぁぁ…マジで死ぬかと思った。ガチの不良の喧嘩初めて見た怖ぇ…」
今まで張りつめていた緊張の糸が解けたのか、身体の力が抜けたように陽翔はその場にしゃがみ込んだ。
「ドラケン!」
「(そういえば二人は知り合いなの?)」
「黙っててすまなかった」
「(ドラケンくん…なんか怒ってる?)」
「オレらも撤収だ!!」
「あれが花垣と宮村か…」
無表情で二人を見る千咒が静かに呟く。
「タケミっちイヌピーカノ!オレらもバックれんぞ!陽翔!まだ気ぃ抜けんな!カノ乗せてズラかんぞ!」
「は、はいっ!」
さっきまで生まれたての小鹿のように震えていた陽翔はドラケンの一言でピシッと背筋を正し、カノトを乗せて警察が来る前にその場から離れた。
「すいません!なんかでかい事言っちゃって!」
「僕もすみませんドラケンくん!」
「バーカ、オマエららしくて良かったよ!」
「ドラケン君も変わってなくて安心しました」
「タケミっち…カノ…すまん。言っておきたい事があるんだ。オレは今、梵のメンバーだ」
「……え?」
「梵のメンバー…?」
まさかのドラケンの発言に二人は驚いた顔を浮かべた。
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