第4章 抱擁
「何を誤解されるのか知んねーけど、やましい事がないんなら、もっと自信持って偉そうにしとけよ」
「……あたしは悟くんとは違うよ」
「違うって何が? オマエは別に五条に雇われてる使用人じゃねーだろ? 本家の事は分家のあいつらよりもよっぽど知ってんだから、堂々としとけばいいんだよ。俺のことだって、そうだろ? 誰よりも知ってんじゃねーの? そういう顔しとけよ」
「でも……」
あたしは悟くんの隣に立てるような人ではない。目障りで下衆だと周りはあたしに悪評を課す。
「婚約者のこと? 楓あたりにチクチク嫌味でも言われた?」
「……」
「オマエも動揺しすぎだろ、婚約者の事、気になってんのまるわかり」
「な! なにも動揺なんかしてないよ。別にそんなの前からわかってた事だし、ただ」
「ただ?」
「あまりに急だったから、びっくりしたっていうか」
「それで、動けなくなって、お盆落としそうになったとか?」
そんな言い方しなくても……。
あたしの気持ちなんて知らないくせに。