第4章 抱擁
カチャ
離れの鍵を開けて奥の部屋に向かう。部屋のドアを開けようとすると隙間から光が見える。
まさか……少し開けると悟くんが見えた。毎年お盆のこの行事の後は、愚痴を言いにここにくるけど今日は来るのが少し早い気がする。
「おっせーわ、便所? 腹の調子でもわりーの?」
「……」
「黙んなよ。ガチでそうかと思うだろ」
「そうじゃないけど、悟くんごめん。今日はもう寝たいんだ」
動く様子がない悟くんに「会食は? 戻らなくていいの?」と促してみるけど「オマエも見ただろ? あれ、俺、いる必要ある?」と聞かれ返事のしようがない。
――それより、こんなところ、分家の誰かに見られたらどうしよう。
「あの、さ、誤解されるから出てって」
「……なんか言われたの?」
「……」
なんでこんなに悟くんはいつも通りなんだろ? 婚約者の事も当主からあんな風に宣言されたのに何とも思わないのかな? ……思わないか、別に前からわかってたことなら。