第4章 抱擁
分家の方々が全て揃い、法要を終えるとお膳が並べられ食事が始まる。社交辞令を絵に描いたような会話が飛び交うだけで面白い話なんかなにひとつねー、くだらねー時間というのが、悟くんに毎年恒例、聞かされている愚痴だ。
あたしは、もちろんその会食には出席しないので、どんな話がされているのかなんてほとんど知らない。使用人達はフル稼働になって働くので、あたしも一緒になってお手伝いをする。
たまたま客間に飲み物を運んだ時は、悟くんが祓った呪霊の数や、階級、高専の現状など近況を伝える会話がなされていた。
そして、突然、あたしの耳に飛び込んできた。
当主の声だ。
「悟の婚約者の件だが」
客間を出ようとしていたあたしの足が思わず止まる。言葉の続きが気になって、何か用事はないかともう一度、室内を見渡す。
あ、あそこに使用済みグラスがある!お盆を手にしてあたしはそれを回収しに向かいながら当主の言葉に耳を澄ます。