第10章 別れ
「フッ、なにこれ」
見た瞬間、鼻から息が漏れてまんま心の声が出てしまった。溜飲が下がりそれと入れ替わるように笑いが込み上げて顔が緩む。当主や母親と目が合うと一様に嬉し顔だ。
「僕以外は全員知ってたの?」
本家の人間を見渡しながら尋ねると、長老も含めて全員頷いた。
マジかよ……。
婚約者以外の部分もすべて抜かりなく目を通す。遺言の内容は何の問題もない。問題ないどころか僕と夕凪にとって曽祖父の遺言はこれ以上ない至高の書だった。
「で、僕はどこにサインすればいい?」
さっさとサインして、心配している夕凪に連絡したい。高専できっと僕からの連絡を待ってる。長老と何度かやり取りしながら署名する箇所を確認する。
その間、隣室から分家の人間がぞろぞろと集まってきた。僕の後方が騒がしくなっている。
遺言書のサインをするにあたり、立ち上がって後方を向く。そんなに広くもないこの和室にぎゅうぎゅうに五条家の人間が揃った。
「本日はお集まりいただきありがとうございます。次期当主、五条悟は曽祖父の遺言に従い同意します」
しきたりに従って僕は、全員の前で宣言し、遺言書に署名した。