第10章 別れ
その後は、僕の誕生日という事もあり、親戚がいつものようにお祝いを持ってきてはおめでとうと言う。
この手の受け答えは、”好きじゃねぇ五条の慣習ベスト3” に入るけど、今日のおめでとうは、僕らの事を祝福するおめでとうのように聞こえて悪い気はしなかった。
さっき目にした呪具を持って近づいて来る奴がいる。僕の事が気にいらねぇ親戚もいるだろ。
軽く警戒してると「術師を辞めて、呪具の使い手がいなくなったから本家で管理して欲しい」って話。今日持ってくるとか、紛らわしいんだよ。
正午に行われた遺言の開示は僕がすぐ同意した事で早々に終了したんだけど、誕生日の祝いの挨拶の受け答えの方に時間がかかって、既に時刻は午後3時を回っている。
夕凪は、きっと今か今かって携帯を眺めてんだろうな。祈るように胸に手を置いて、悟くんまだ?って思いながら。
「彼女にメールしていい?」
当主に尋ねると、待てと言われる。夜に本家で詳しい話し合いの場がもたれるから、その後にしろって。まだ何を話すってんだよ。
それは婚約の儀までの流れと、具体的に五条家でどう進めるかって話だった。僕はすぐにでも夕凪に話したいって言ったんだけどそれには反対される。夕凪はまだ17だ。婚約の儀まであと2年。話をするには若すぎるし早すぎるって言う。
生まれながら五条を背負う事を分かってる僕と、急に五条家に交じることになる人間では重圧が違うと言う。前もって遺言が僕に開示されるのは、僕の意思の確認と、婚約者が不安なく同意出来るよう五条家全体で迎え入れる準備をするためなんだとか。