第10章 別れ
そう思ってこれまでずっと過ごしてきたけど、具体的にどうすれば守れるのか、どう行動していいのかわからなかった。わからないまま時が過ぎ、体調が悪くなった。
けど、奥様にバレてしまっては、今すぐここを出なくちゃいけない。追求されたら逃げられない。婚約者が決まろうとしているのに、こんな事あってはならない。
過去にも事例がないか調べたかったけど、体調が優れなくて、調べきれなかった。ここにいてもきっと守れない。あたしは五条家の邪魔者でしかない。
さっき、悟くんがまだあたしのことを好きだと言ってくれた時、悟くんに思い切って相談してみようかと思った。悟くんなら守ってくれるんじゃ? って一瞬そんな気がした。
でも、遺言を守るっていうなら、彼は五条家のために自ら手を下す判断をするかもしれない。それだけは……避けたい。
あたしは、守りたい。
ごめん、悟くん。やっぱり側にはいれなくなった。誰のせいでもない。悟くんのせいでもないよ。あたしはこの事実に最初戸惑ったけど、嬉しかった。それにあたしも同意の上だった。
悟くんはこの事を知ったら、ほんの少しは喜んでくれたのかな。あの時、心から愛し合ってたのは間違いないよね? そう思ってたんだけど、これも夢想かな……。
五条家に戻り、急いでスーツケースに荷物を積める。ほとんど人がいないから、怪しまれることもなく、いっぱい荷物を詰め込む。心配をかけることになって、こんな親不孝をしてしまって申し訳なく、お母様に手紙を書く。