第1章 犯人は僕です?いいえ、犯人は私です。【コテージ編】
「犯人にバレないためだろう。スマホなら隠しながらダイイングメッセージを残したんだ」
「…それはおかしいわ。スマホの文字入力はタッチパネルよ。タッチパネルは画面を見ながらじゃないと多くの人は打てないじゃない!」
「確かに…」
「そんな証拠が有効とは到底思えないわ…!」
「そもそもダイイングメッセージなんて推理小説じゃあるまいし」
「死にそうな間際にそんな余裕あるのか不思議だよねぇ」
「警察に受理されるかもわからないな…。…とりあえず、提出してみたら?」
「(とりあえず提出して受理されたらどうすんのよ!バカアオキ!)」
苛立ちが浮かぶ。
「その証拠は警察には秘密にした方がいいわ。シラユキにとってもよくないもの」
「…どうしてだ?確かにさっきのクロサキの指摘でダイイングメッセージとしてはちょっと変だなぁと思うところはあった」
「(アカイ…まだ粘る気?)」
「ただ、変かどうかは警察の判断に委ねるということで…まず警察にこのスマホを見せて“悪い”ことはないと思う」
「それが…見せると都合が“悪い”のよ」
「…クロサキに都合が悪いってことか?」
「私に無実の罪が着せられるのも悪いことなんだけど…シラユキにとっても都合の悪いことなのよ」
「シラユキにとって…?」
シラユキにとって都合が悪いこと。咄嗟に出た一言だったけど…結構いい作戦かもしれない。シラユキは人には言えないあることをしていた。それはアカイからお金をもらっていたということ。
「シラユキは…“恐喝”していたのよ」
「きょ…恐喝だって…?」
「(アカイ…自分のことだと気づいたみたいね…)」
「どういうこと…?」
「シラユキはある人物の弱みを握っていたの。その弱みを黙っておく代わりに、毎月口止め料をもらっていたのよ」
「ほんとかよ…」
「とんだ悪女だわ〜」
「(アンタが言うな…)」
「シラユキが恐喝してた…?信じられない…。証拠はあるのか」
アオキはシラユキの本性を知らないようだ。どうやらアオキと付き合っている時は猫を被っていたみたいね。
私も証拠を出したいのは山々だけど…ここでスケジュール帳を見せると恐喝相手がアカイだとわかってしまう。
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