第6章 自覚
「桜月」
「…………泣く資格、ないから」
きっと今泣いたら蓮は迷わず胸を貸してくれる。
甘やかしてくれる。
だけど今のあたしには蓮の優しさに甘える資格なんてないから。
あたしの迷いが。
中途半端な嫉妬が美桜も蓮も傷付けた。
橘、さんも。
「あんま責めんなよ」
蓮の、優しい声。
甘い声。
蓮の腕が頭を引き寄せて。
胸へと囲う。
「悪いのは全部俺の方」
「違う」
「違わない」
「…………違うよ、蓮」
「…………好きだ、桜月」
蓮の手のひらに誘導されて、上を向けば。
蓮の甘い唇が重なる。
甘いはずの唇なのに。
涙の味。
こんな時まで蓮は。
あたしに泣ける場所を作ってくれるんだ。
ねぇ神様。
どうしてあたしと美桜を別々にしたの。
元は同じ卵の中にいたのに。
そのまま分かれることなくひとつの個体として産まれていれば。
今こんなにも美桜を傷付けることもなかったのに。
神様。
あたしたちはなんで、別々に産まれちゃったのかな。