第6章 自覚
『…………したい』
我ながらすごいこと言った自覚、ある。
いまさら体温やばいし。
心臓痛いし。
蓮の後に続いて寝室、来たはいいけど。
足がすくむ。
だって本気でそう思った。
誤解してたお姉さんのこと。
美桜のこと。
こんなことしてる場合じゃないって。
本気で思った数分前の気持ちもほんと。
だけどいま。
愛しくて欲しくて仕方ないの。
蓮に触れたくて。
触れて欲しくて仕方ない。
「…………なぁ」
「っ」
「この状況、わかってる?」
「…………っ、る」
「ガチガチじゃん」
振り向いて。
蓮の手が顎へと触れる。
ふ、て。
笑って。
目を細めた。
両手で蓮の頬を包み込み、キスをして。
ベッドへと蓮を押し倒し(わざと蓮がベッドに倒れ込んだわけなんだけど)。
蓮を、見下ろす。
「あたし、蓮が好き」
「…………」
蓮の、視線。
余計に身体が熱くなる。
「蓮が好き」
「…………」
言葉にするだけで目頭が熱くなる。
大好きな人が目の前にいて。
あたしを、その目にうつしてくれる。
手の届くところにちゃんといて。
言葉を、聞いてくれる。
「8年前、勝手に逃げてごめんなさい。そのせいで怪我させて、大好きな陸上も出来なくなったの、ごめんなさい。ずっとずっと逃げて、ごめんなさい…………」
伝わるかな。
大事なこと。
伝えたい。
蓮にはちゃんと。
伝えたいの。
「…………ずっと好きでいてくれて、ありがとう」
蓮の左手が。
溢れた涙を拭ってくれて。
舐めとるように。
瞳へと口付ける。
「ずっと。ずっとずっと好きだった。蓮以外、いらない。離れないで蓮。置いていかないで。…………嫌いに、ならないで、蓮」
後頭部が、引き寄せられて。
唇が重なる。
蓮のキスは、いつだって甘かった。
優しくて。
でも激しくて。
いつも苦しくなる。
「…………いいな、今日」
蓮の親指が唇のまわりをなぞり、ふにふにと、感触を楽しむように優しく触れた。