第14章 花爛漫
静代との面会は、そのあとに決まった。
5日後、こちらに新しい家元とその妻となる方と一緒に見えるそう。
今後の華雅流の話を詳細に話し合いたいとのことだった。
そして、わたしの快気祝いの準備をしていたらしく、その席でわたしに舞を踊ってほしいとのこと。
「その宴は、関係者のみでするのかい?」
その連絡を受けてきた松乃は、「はい」と返事をする前にハッとした表情を見せた。
「あぁ…申し訳ございません。確認しなければなりませんが、ただ、主催は実田様がなさるとのこと。静代様は童磨様にも是非にと仰っておいででした」
「......どういう意図かな?」
スゥーっと空気が底抜けに暗く冷たくなる。
童磨と静代、実田の間で交わされた約束は『菖蒲を助けること、家元と華雅流を潰すことは公にせず墓場へと持っていく』というものだった。
高弟も静代と新しい家元を入れても4人。
歴史と誇り、その他重んじるところが、あまりにも童磨が教祖という立場で入ることは素人で考えても不自然すぎる。
「今回の一件で、一番お世話になった童磨さんをないがしろにしないということだと思います。師範はそういう義理は大切になさる方ですので…。」
菖蒲は真っすぐに童磨を見てそう答えた。
安心して信じて欲しいとの思いが込められた視線に、重くなった空気は和らいでいく。
「菖蒲ちゃんは、俺がいたら嬉しい?」
「いてくださると心強く思います」
菖蒲の手に重ねられた手は冷たい。
それでも動揺一つすることなく彼女は答えた。
「じゃぁ、俺は控えの特等席での参加としよう。表へ出ろと言われたら出席しないよ。
あの二人は極力…菖蒲が悲しむことはしたくないから…ね?」
「ありがとうございます」
松乃も菖蒲も何事もなければいいと密かに願う。
百年以上倒されることなくその地位を維持してきた強さは、たとえ鬼を狩る生業ではなくとも、一番傍にいれば充分に理解に容易いもの。
他の高弟たちも、新しい家元夫妻も、菖蒲の元家元の下での劣悪な待遇と、その後の病による危機を知っている。