第22章 呪い合い、殺し合い、
そしてレシートが2枚、
2本の大根に変化して飛んでくる。
「大根!?」
何故、と考えたのが隙になった。
次の瞬間、パカリと大根が割れて中にあった包丁がまともに腕に突き刺さってしまう。
間髪入れずにレジィの前蹴りが飛んできた。
負傷した腕では重い蹴りを受けきれず、伏黒は蹴飛ばされる。
「俺が再現した物は式神みたいなもんだから、簡単な命令なら与えられるんだよね。包丁だって普通は飛ばないでしょ」
運転手のいないトラックが走ったのも、大根の中に包丁を仕込んだのもすべて再契象の術式効果だ。
「君の性格的に無駄だと思うけど一応聞くね、持ち点くれたら楽に殺してあげるけど?」
手をついてなんとか起き上がった伏黒は満身創痍だが、レジィの問いかけには一切答えない。
逃げ場のないこの体育館を選んだ最大の目的は、ここでなら相手を逃さず、確実に閉じ込められると踏んだから。
「……結界術ってのは難しいよな。いつまで経っても現実空間にスケールの異なる擬似空間を重ねる感覚が掴めない。だから」
レジィの攻撃の手が止まった今が最大のチャンス。
殺されてやるつもりなど毛頭ない。
両手を組み、掌印を作る。
「この体育館のスペースをそのまま俺の領域として転用する」
領域展開
―嵌合暗翳庭―
体育館全体に一気に伏黒の影が広がり、暗く閉ざされる。
「俺は別に大技がないとは言ってねぇよ」