第22章 呪い合い、殺し合い、
最初に動いたのは黄櫨だった。
抉り出した自分の眼球に歯を当て、まず歯だけを爆発させ、爆風を利用して眼球を飛ばす。
それに対して高羽はどこからともなく取り出したハリセンで打ち返した。
「たまや〜!」
そして頭上で眼球が爆発すると同時に黄櫨に肉薄、
「物騒な術式だなぁ!だがしかし!バラエティにおいて!」
片目を修復している最中にハリセンで両目を叩かれ、反転術式で治しきる時にはもうそこに高羽はいなかった。
どこだ、と視線を走らせると予想だにしない下の方から高羽の声が。
「“赤”は御法度だぜ」
黄櫨の背後に屈んでいた高羽、両手を合わせて人差し指だけ立て、ピストルのような形をしたそれを迷わず黄櫨の股間に突き出した。
「ーっっ!!なっ、なめるな!!」
強烈な痛みに悶絶する黄櫨は青筋を浮かべながら振り向く。
が、そこへ高羽の蹴りが入り、マンションまで吹っ飛ばされた。
無茶苦茶な戦い方で終始黄櫨を圧倒する高羽を見て、伏黒は思わず呟いていた。
「……高羽が敵じゃなくてよかったよ」
「一度は言われてみたいセリFUUU!」
ガッツポーズをした高羽はこちらを振り向かずに手を振る。
「じゃあな、伏黒少年!なずな嬢!死ぬなよ!」
突然高羽が告げた別れの言葉。
なずなが慌ててその背中に声をかけた。
「あ、あの!助けてくれてありがとうございました。私、何もお礼できなくて……」
「なぁに君が伏黒少年と再会できたところを見られただけで十分さ!」
「で、でも!服はちゃんと着てくださいね!」
「ハッハッハ!それは野暮というものだ!」
高羽は大きく笑うと、黄櫨に追い打ちをかけるべく走り出す。
一方、伏黒達と同じく高羽と黄櫨の戦闘を見ていたレジィはやれやれと頭を掻いた。
「あーあ、死んだねアイツ。あそこまでコケにされちゃ、黄櫨も本気を出す」
「テメェの心配しろよ。言ったよな、俺はもうこの結界での目的は達した」
そう言って伏黒は呪具を構える。
「本気で戦える。出し惜しみは無しだ」