第20章 10月31日 渋谷にて
鉄臭い液体、隣からビチャリと何かが落ちる音。
「……え、ぁ?」
恐る恐る隣に目を向けると美々子が原型を留めぬ程に切り刻まれ、血溜まりが広がっていた。
「っ、美々子!美々子!!」
どうして?
なんで?
妹の変わり果てた姿に頭の中はぐちゃぐちゃ、なぜという疑問で埋め尽くされていく。
目の前の肉片と血溜まり、それを理解することを脳が拒むが、赤く染まった美々子の制服の切れ端が否応なく事実を突きつけてくる。
「たかだか指の1、2本で俺に指図できると思ったか?……不愉快だ」
宿儺はつまらなさそうに眉を寄せている。
頭が焼き切れると錯覚する程の怒りで奈々子の恐怖は吹き飛んだ。
「すくっ、なぁあっ!!死ね!!」
奈々子がスマホのカメラを向けるが、その瞬間に首を切られ、全身細切れにされてしまう。
パシャリというシャッター音だけがその場に響いた。
宿儺はそのスマホを手に取る。
「フム、携帯……いや、写真機の方か。大方、被写体をどうこうするものだったのだろう。つまらん」
スマホを握りつぶすと、今度は漏瑚を見やる。