第20章 10月31日 渋谷にて
「次はオマエだ、呪霊。何の用だ?」
「用は……ない!」
「何?」
「我々の目的は宿儺、貴様の完全復活だ。今は虎杖の適応が追いつかず、一時的に自由を得ているにすぎない。それは自身が一番分かっているはずだ」
虎杖の適応が追いつくのは時間の問題。
そして残りの指の数を鑑みると、このような強引な手段で宿儺が肉体の主導権を握れるのはこれが最初で最後だ。
以前、このような手段を取らずに真人が宿儺に“縛り”を作らせようとした時があった。
今年の9月初旬、里桜高校で虎杖と親しくなった吉野順平の魂を変形させた時だ。
あの時、虎杖はなんでもするから吉野順平の魂を元に戻してくれと懇願したが、宿儺は断ったという。
自身が完全復活する絶好の機会だったはずなのにだ。
だが、真人から更に話を聞いて納得した。
宿儺の反転術式が他人の治癒も可能なものだとしても、真人の“無為転変”で変えられた魂の形は、反転術式でどうこうできるものではない。
宿儺はあの時、“縛り”を作らなかったのではない、作れなかったのだ。
「虎杖悠仁が戻る前に奴との間に“縛り”を作れ!肉体の主導権を永劫得るための“縛り”を!」
現時点では宿儺の方が優位、それにたとえ虎杖が“縛り”を渋っても、首を縦に振らざるを得ない状況を作ることも可能だ。
「虎杖の仲間がここに大勢来ている。やり方はいくらでもある!」
「必要ない」
即答した宿儺に漏瑚は開いた口が塞がらない。
「俺には俺の計画がある。だがそうか……ククッ、必死なのだな、オマエら呪霊も」
そしてある戯れを思いつく。
「指の礼だ、かかって来い。俺に一撃でも入れられたら、呪霊の“下”についてやる」
「手始めに渋谷の人間を皆殺しにしてやろう。1人を除いてな」
「……二言はないな」