第20章 10月31日 渋谷にて
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まだ百鬼夜行が行われる前―……
「ねぇ、夏油様、五条悟って何者?超強いんでしょ?」
とあるビルの屋上に椅子を出して、そこに座った夏油の髪を梳きながら奈々子はそう尋ねた。
美々子はぬいぐるみを抱きしめながら、その会話を静かに聞いている。
「んー……親友だったんだ。ケンカしちゃって、それっきり」
夏油は少し考えた後、そう答えて困ったように笑った。
柔らかな声、優しい眼差し、小さい頃はよく頭を撫でてくれた大きな手。
奈々子も美々子も夏油のことが大好きでたまらなかった。
この春の日だまりのような暖かな日々がずっと続いてほしかった。
夏油様を殺した五条悟を私達は一生許さない。
……でもね、これでいいとも思ったの。
だって、五条悟は夏油様のたった1人の親友だから。
次にフラッシュバックしたのは、死亡したはずの彼が訪ねてきた時のこと。
夏油様の頭を割り、そこに居座っている下衆野郎。
ソイツを初めて見た時、腹の底から怒りが湧いたことを覚えている。
その怒りは消えることなくずっと2人の中で燃え盛っている。
一刻も早く夏油様から出て行け。
地獄に落ちろ。
後悔させてやる。
「私達はもう1本の指の在処を知っています。そいつを殺してくれれば、それをお教えします。だから、どうか……」
「面を上げろ」
2人が顔を上げると宿儺がフッと笑う。
そして突然、奈々子の頬に生暖かい液体がかかった。