第20章 10月31日 渋谷にて
無抵抗の虎杖に指10本全て飲ませるのにそう時間はかからなかった。
これで虎杖の中には最低でも15本の指がある……
「ゲホッ」
「!!」
咳き込む声に驚き、そちらを見ると、先程燃やした2人が怯えきった状態でいた。
彼女達には火傷ひとつない。
「生きておったか」
どちらかの術式だろうな。
だがこの怯え様、そう何度も防げまい。
「手間をかけさせるな」
一息に燃やすつもりでスッと2人に向けた右腕は、手首から先がなくなっていた。
それを見た美々子と奈々子、漏瑚自身でさえ瞠目する。
「1秒やる。どけ」
剣呑な表情でそう言い放ったのは、切断した漏瑚の手を煩わしそうに打ち捨てた宿儺。
漏瑚は慌てて離れる。
恐怖で身体が強張り、心臓が早鐘を打つ。
全身から冷や汗が吹き出した。
これが宿儺……!
五条悟とは異質の強さ!
圧倒的邪悪!!
互いの一挙手一投足が全て死因になり得る恐怖。
美々子も、美々子を庇うように抱きしめる奈々子もガタガタと震えている。
息……!
息 息 息 息!
息していいんだよね!?
殺されないよね!?
宿儺という脅威を前に呼吸すらままならない。
「頭が高いな」
宿儺が言葉を発した途端、奈々子は美々子の頭を抱えて土下座、次の瞬間、片膝をついた漏瑚の頭の先が切断された。
背後の壁が一直線に抉れる。
「片膝で足りると思ったか?実るほどなんとやらだ。余程頭が軽いとみえる」
脈打つように頭から出血する漏瑚を一瞥し、深々と頭を下げた美々子と奈々子を見下ろす。
「ガキ共、まずはオマエらだ。俺に何か話があるのだろう、指1本分くらいは聞いてやる、言ってみろ」
「……下に、額に縫い目のある袈裟の男がいます。そいつを殺してください」
2人は更に深く頭を下げる。
「夏油様を解放してください」