第20章 10月31日 渋谷にて
「急ごう、奈々子。指で呪霊が寄るかも」
「分かってる」
美々子と奈々子が意識のない虎杖を男性トイレから引き摺り、近くの壁にもたれさせて自分達の持っている宿儺の指を飲み込ませようとしていた。
「お願い、出てきて、宿儺様」
虎杖の口をこじ開け、喉に指を押し込んで無理やり飲み込ませる。
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漏瑚が急行した先には、夏油と協力関係にあった呪詛師の少女2人と気絶した虎杖がいた。
虎杖の顔に宿儺の紋様が現れているのを見て、彼女らが指を飲ませたのだと察し、舌打ちする。
「貴様ら、指を何本喰わせた!!」
「い、言わない……!」
「美々子!!」
竦む美々子の肩を奈々子が抱き寄せ、スマホを取り出す。
「そうか、死ね」
漏瑚が手を翳すと彼女達は一瞬で燃え上がった。
わずかな悲鳴が聞こえたが、気にせず虎杖に向き直る。
よし、まだ紋様は消えていない。
不測の事態だが、最大限利用させてもらう。
以前、高専から宿儺の指を盗む算段をしていた時、夏油から聞いていた話。
虎杖悠仁は指を20本全て取り込んでも、肉体の主導権を宿儺に譲らないだろうこと。
だが、それは例えば1日1本、20日間かけて取り込んだ場合だ。
一度に10本も指を取り込めば、適応が追いつかず、一時的だが肉体の主導権は宿儺に移る。
漏瑚は懐から呪符を貼り付けた巻物を取り出した。
その中には高専から奪ったものを含め、宿儺の指が10本括りつけられている。
それらを外し、未だ意識が戻らない虎杖に次々と飲ませていく。