第20章 10月31日 渋谷にて
「後は任せろ。人間などに依らずとも、我々の魂は廻る。100年後の荒野でまた会おう」
陀艮の燃え滓をくしゃりと握り、放すと漏瑚は陀艮を祓ったであろうと思しき術師達を冷たく睨む。
「……さて」
次の瞬間、漏瑚は七海に肉薄し、腹部に軽く触れていた。
「1人目」
七海の上半身が燃え上がる。
「七―!」
驚愕する真希も容赦なく燃やす。
「2人目」
続いて直毘人を狙うが、投射呪法ですぐに躱された。
触れられぬよう直毘人は漏瑚の背後に回り込む。
しかし、直毘人が着地した先の柱からモコモコと火口が出てくる。
ほんの20分程前ならこの後に続く攻撃も避けられただろう。
直毘人は禪院家相伝の術式としては歴史の浅い投射呪法を天性のコマ打ちセンスと時間感覚で使いこなし、五条悟を除いて最速の術師とまで呼ばれた者だ。
だが、陀艮との戦いで右腕を失った今、その呼び名は既に過去のものとなっていた。
出現した火口から交差するように、灼熱の火柱が直毘人を襲う。
「3人目」
漏瑚がトドメを刺そうと直毘人に触れた瞬間、
竦むような強大な気配が出現した。
息を呑んで気配の方を振り向く。
宿儺……いや違う、指だ!
宿儺の指が渋谷のどこかで解放されたのだ!