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妖刀使いの臆病呪術師【呪術廻戦】

第20章 10月31日 渋谷にて



陀艮は注意深く侵入者を観察していた。


なんだこの男……呪力がない?

非術師を含め、全ての人間にあるはずの呪力が全く感じられない。


信じがたいことだが、それは同時に術式や身体強化もないということ。

そんな人間は陀艮の脅威にはなり得ない。


「言うに及ばんな」

陀艮の腹から湧き出した式神が真っ直ぐ甚爾へ向かう。



が、それらは一瞬で砕け、陀艮の顎にも強烈な打撃が直撃した。


「っ!?」


何だ、今の力は!?


状況が飲み込めないまま、無数の式神を放つがそれも次々と細切れに。
式神を何匹呼ぼうが攻撃は届かず、ただ一方的に叩き潰されていく。



その間にも甚爾は足を止めることなく陀艮を追う。



陀艮は自らの領域の海の上に立っている。
海中にも無数の式神を潜ませ、海に足を踏み込めば即座に喰らいつく。


だが、甚爾はそれらもお構いなしに海面を駆けるように高速移動しており、式神では到底捕まえられなかった。


呪力がないにもかかわらず、上がり続ける速度に逃げきれない、と踏んだ陀艮は特に強力な式神を呼び出す。


巨大なグソクムシの式神が2匹、海中から立ち上がる。

硬度も攻撃力も今までの式神とは段違いだ。


これで奴を八つ裂きにする……!





しかし、それらも游雲のひと振りで砕け散ってしまう。


甚爾は止まることなく陀艮に迫った。



“游雲”は特級呪具の中で唯一術式効果が付与されていない、純粋な力の塊。

それ故にその威力は、持つ者の膂力に大きく左右される。




陀艮の水の防壁も游雲を振るう甚爾には無力だった。



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