第20章 10月31日 渋谷にて
誰だ……!?
人間……術師か!?
その場にいる誰もが謎の侵入者に驚愕していた。
脱出ではなく、新たに術師を招き入れたのか!?
陀艮も例外なく驚いていたが、それでも術師達が外に逃げ出すことはなかったので、依然として優位性は揺らいでいない。
万が一にも逃れられぬよう伏黒が空けた穴を塞いでしまう。
一方、侵入者は一瞬で地上に降り、真希の游雲を掴んでいた。
……掴まれるまで気づかなかった。
速!?
今空中にいたろ!?
それだけじゃねぇ、なんだこの力は!!
ぐんっと振り払われ、易々と游雲が奪われる。
「真希さん!?」
投げ飛ばされた真希も驚愕しきりだった。
口元に傷痕のある男は見たことのない顔だった。
目の色が反転しているのもあるが、何よりも……
呪力をまるで感じなかった……!
ただの力比べで負けたのか!?
この私が?
謎の男の侵入に混乱を来たす中、七海は戦況が相変わらず劣勢ということも理解していた。
「伏黒君」
「駄目です。穴を塞がれました。しかも今のでコッチの狙いがバレた。もう簡単には空けさせてもらえない」
伏黒が悔しげに歯噛みする。
ただ1人、直毘人だけは侵入者の顔に見覚えがあった。
「甚爾か……!」
姿は禪院甚爾その人、その殺気は直毘人でさえ竦ませる程に強烈なものだった。
そして、最大の疑問―……
彼は10年以上前に死亡している……
なぜここに……?
直毘人は甚爾が降霊術によって降ろされたことを知らない。
オガミ婆の降霊術は彼女の死後も継続する。
器である孫の呪力が尽きた時点で降霊も終わる……はずだった。
はじめから禪院甚爾の肉体に上書きされた孫の魂に呪力はなく、その上その肉体は呪力を消費しない。
術式は終了する契機を失い、そのイレギュラーから暴走。
今、彼は器が壊れるまで本能のまま戦い続ける殺戮人形と化していた。
……―その牙は、常に強者へと向かう。