第20章 10月31日　渋谷にて

一箇所に集まろうとしている術師達を見ても、陀艮が焦ることはなかった。


少年の護りを固めるか、
こちらとしてもまとまっていればやり易い……


しかし、冷静に術師達の行動の意図を考える。


あれは本当に防御を固めるためのものなのか……？


固まったところを式神に一網打尽にされることが分からない程、向こうも馬鹿ではない。
この状況を打開するためには私を攻撃し続けなければいけないことも理解しているはず。




……否！

そもそもの狙いが防御ではないのか……！







陀艮がこちらに向かって走り出してきた。

最小限の言葉だったが、もう意図がバレたらしい。

だがもう距離が開いている。
伏黒の領域もまだあるため、必中効果もなくなっている。

海から新たな式神を出しても追いつけないだろう。



「伏黒君の足下へ！！」


伏黒の足下に穴が広がり、その向こうに駅構内の景色が見える。

伏黒の一番近くにいたなずなが穴に飛び込もうとしたその時―




「っ！？……え……？」

「渡辺！？」


衝撃波に似た何かがぶつかり、後ろに跳ね除けられ尻もちをついてしまう。

伏黒が心配そうにこちらを見るが、なずな自身も何が起こったのか分からず、一瞬呆然としてから衝撃波を感じた穴とその上空を見上げて瞠目した。





男がいる。



体格に恵まれた黒髪の男。
下から見上げる形になっているため、顔は分からないが、伏黒が空けた穴からここに入ってきたことは間違いない。