第20章 10月31日 渋谷にて
驚愕する陀艮の意識の外、必中効果が消え、式神の勢いが衰えた今、無数の式神の包囲網を抜けた術師はもう1人いた。
直毘人の左拳が陀艮に迫る。
髭の男まで!!
その拳を伏せて避けたところへ真希が襲い掛かる。
だが陀艮とてただで攻撃をもらうつもりはなかった。
腹からウツボの式神を出して一気に押し退けようとする。
対して直毘人は投射呪法で、真希も游雲で向かってきた式神を倒す。
「たかが右腕1本、さりとて71年物。高くつくぞ」
式神をフレームに閉じ込め、蹴り砕いた直毘人。
より多くの式神に襲われたため、五体満足では切り抜けられなかったようで、右腕が完全に喰い千切られていた。
直毘人と真希が陀艮に攻撃し続けているにも関わらず、式神は伏黒にも向かってくる。
なずなと2人がかりでそれらを叩き切る七海は尚も劣勢を感じずにはいられなかった。
この状況が続けば勝機はある。
だが、“続けば”の話だ。
式神を倒す合間に見た伏黒は完全に息が上がっており、急激な呪力消費に身体が耐えきれず、鼻血が出ている。
伏黒君はもう限界だ……!
領域展開し続けるだけでも膨大な呪力消費だというのに、その上領域の押し合いをしている状態。
しかも相手の呪力量は無尽蔵と言っていいレベルだ。
なずなも七海と同じことを思っているのか、しきりに伏黒を気にしている。
短期決戦しか活路はないか……