第20章 10月31日 渋谷にて
「水の防壁か……同時に大技は出せるのか?呪力過多でもある。術式もまだまだ手数があるな」
直毘人が試しに水のリングに触れると弾かれる。
生半可な攻撃ではこの防壁は破れまい。
「ならばどうする?」
自身に問うているというより、七海達に問いかけているような言葉。
そして、その答えは考えずとも分かるもの。
直毘人の初動を思い出し、ここからの動きを頭の中で描く。
「簡単だ。技を出す前に……」
速度で潰す!!
ほぼ同時に全員が攻撃に動いた。
直毘人を主軸に凄まじい数の打撃、斬撃を繰り出し続けていると、水の防壁に綻びが出てくる。
猛攻を受け続ける陀艮は削れていく防壁にあり得ないと目を見張った。
水の防壁が崩れるまでそう時間はかからなかった。
しかし、防壁の崩れた先に陀艮はいない。
間一髪のところで攻撃の及ばない上へ逃げたのだ。
「滞空できるんだもんなぁ……俺でも上に逃げる」
その動きを読んでいた直毘人が陀艮を頭から蹴落とす。
更に着地点に先回りし打撃を打ち込んだ。
直毘人の術式・投射呪法は、1秒を24分割、己の視界を画角とし、あらかじめ画角内で作った動きをトレースする。
術式発動中、直毘人の掌に触れられた者も24分の1秒で動きを作らねばならず、失敗すれば動きがガタつき、1秒間フレームに閉じ込められる形でフリーズする。