第20章 10月31日 渋谷にて
陀艮を見据えた直毘人が口を開く。
「呪霊よ、アニメーションが1秒に何フレームあるか知っているか?」
「呪霊ではない」
反論する陀艮を無視して直毘人は続ける。
「昨今の解像度やフレームレートを上げたがる風潮……」
「私は陀艮。花御、漏瑚、真人にも」
「4Kやら60fpsやら」
「我々には名前があるのだ!!」
「不粋だとは思わんか!!」
噛み合わない会話の最中、隙を窺っていた七海が上から攻撃を仕掛けると同時に真希となずなも動いた。
しかし、陀艮は七海の鉈を左腕で易々と受け止める。
そのまま七海を叩き落とし、続いて仕掛けた真希の大刀を掴むと、真希の腹に手を伸ばした。
まずい……!
なずなが陀艮の腕を切ろうとしたが、振った鬼切は空を切った。
気づくと陀艮はフレーム内に収まっていた。
直毘人が閉じ込めたのだ。
すかさず七海がそこを叩くが水の防壁に阻まれた。
陀艮の周囲を囲む水のリングを睨み、七海は鉈を握り締める。
ダメージなし……
というよりHPが果てしない感触だな。
「一級が2人も揃って祓えんとは、由々しき事態だな」
そう言って肩をすくめる直毘人は、真希もなずなも頭数には含んでいないようだ。
それでも焦りは見せない彼を真希が睨む。
クソッ、あの時ジジィが術式出してなかったら、私はあのまま殺されてた。
恥だ……!