第20章 10月31日 渋谷にて
それを見た直毘人が眉を上げてフッと笑った。
「貴様、何人喰ったんだ?」
人骨は陀艮の背丈程の山になっている。
ここに来るまで人が全くいなかったのは、そのすべてをこの呪霊が喰っていたからだ。
明らかに陀艮の体積を上回る量の人数だが、呪霊であればそういう性質もあり得る。
理屈は分かるが、見ていて気持ちのいいものではない。
強制的に吐かされた陀艮はその苦しさからか、大きな目から涙を流している。
それも大量の人骨を見た後では術師の同情を誘うものではないのだが……
「ぶぅー、ゔー、じょうごぉ、まひとぉ」
「はなみぃ」
陀艮は戦闘に参加していなかったが、五条封印までの一部始終を見ていた。
その過程で花御が五条に祓われてしまったのも。
「はな、みぃ」
呪霊達の中でも殊更優しく、多くの時間を自分と共に過ごしてくれた花御。
祓われた直後は何が起こったのか分からず、それを理解した時には悲しみが、そしてその悲しみは術師への怒り、憎しみへと変質していった。
陀艮が目を血走らせる。
「よくも、よくも花御を殺したな!!」
何かが頭の皮を突き破って出てきて、空中に浮いた状態で止まる。
それを目で追った直毘人は片目をすがめた。
「成程、弱いハズだ。まだ呪胎だったというわけか」
太い手足、口から蛸の腕のような触手が生えている呪霊。
先程までと比べて頭身が上がり、より人型に近く、格段に強い気配だ。