第20章 10月31日 渋谷にて
避難させた一般の人々に駅から出られるようになったら、一刻も早く渋谷を離れるように伝え、4人はB5Fへ向けて階段を降りていく。
「五条悟が封印か……狐につままれたようだ」
「私もです。ただ、偽物とはいえ夏油さんが絡んでいる。その辺りに種があるのかと」
「俺としてはこのまま五条家の衰退を肴に一杯……」
「やる気がねぇなら帰れよ」
真希がたしなめると、直毘人が言い返す。
「帰れ、か。それはオマエ達の方だろ、なぁ七海一級術師殿?」
「真希さん、これに関しては直毘人さんの言う通りです。渡辺さんと共に……」
「酔っ払いよりは役に立つさ」
その言葉に七海は思わず直毘人を見た。
「飲んでるんですか?」
「飲んれらいよ」
呂律は回ってないし、吐く息からもアルコールの匂いが……
これは間違いなく酔っている。
1人の方がマシだった、なんてことはないよな……
口には出さなかったものの、七海は内心悪態をついていた。
不自然なくらい人も、その痕跡もない駅構内を進むと、呪霊の気配が強くなってくる。
通路の先、広くなっている場所に何かいるようだ。
「あそこ、何かいますよね……?」
鬼切を握り締めるなずながおずおずと尋ねると、七海も真希も静かに頷く。