第20章 10月31日 渋谷にて
22:20 井の頭線渋谷駅アベニュー口―
「なずな、そっち行ったぞ!」
「はい!」
避難のために一箇所に集まっている一般人を狙う改造人間を真希となずなで次々と仕留めていく。
元々は人間だった者を殺すことに抵抗はあったが、放置すれば一般人が殺されてしまうし、一度改造された人間は家入の反転術式でも助けられないと言われ、ならばせめて苦しまぬようにと割り切っていた。
野薔薇が新田を連れて離脱してしばらく経つが、伊地知の安否は未だに分からず、直毘人も相変わらず真希達を手伝う素振りも見せない。
改造人間1体1体はそれほど強くないのだが、数が多いのが厄介だった。
息つく間もなく襲ってくる。
少しの集中力の緩みで見落としが発生するもので―……
「後ろだっ!」
「っ!?」
真希の鋭い声に振り向くと、3体の改造人間がなずなに向かって手を伸ばしていた。
咄嗟に目の前に迫る腕を切りつけるが、伸びてくる腕の全ては切り落とせない。
避けられない……っ!
身を固くしてぎゅっと目をつぶる。
しかし、予想していた衝撃は来ず、代わりに重い打撃音と肉が潰れるような音。
そして改造人間の断末魔が聞こえた。
「無事ですか?」
なずながおそるおそる目を開けると、そこには鉈を持った七海がいた。
「七海さん!?恵と同じ班じゃ……!」
「話は後です。まずこのフロアにいる改造人間を全滅させます」
七海の加勢で戦況は一気に好転した。
5分も経たない内に改造人間は全滅、残っていた改造人間の半分は七海が倒したんじゃないかと思うほど圧倒的な実力だった。