第20章 10月31日 渋谷にて
「まだ息があるな」
確実に弟達の仇を取るため、とどめを刺すべく近寄っていく。
「あの世で弟達に詫びろ」
ドクン―……
その瞬間、突如として脹相の脳内に溢れ出した
存在しない記憶―……
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穏やかな景色だった。
優しい木漏れ日が差す花畑の隣にある芝生にテーブルとイスを出して食事をしている。
壊相と血塗、それに受肉を果たせなかった6人の弟達も勢揃いだ。
テーブルの上には瑞々しいサラダにやわらかいパン、香ばしい匂いがするチキンの香草焼きといった料理が所狭しと並ぶ。
兄弟達が楽しく語らっている。
脹相はその様子を眺め、聞いているだけで幸せだ。
「ほら、兄ちゃんも!」
血塗の隣に座って笑顔で籠に入ったパンをこちらに差し出してきたのは……
虎杖 悠仁その人だった。
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「あ、あぁ……あ゛」
強烈な頭痛に頭を抱え、よろめきながら虎杖から離れる。
「何、だ……?どういうことだ?」
なんで、オマエが……
「ありえん……何、故」
壁によりかかり、脹相はなんとかその場を後にした。
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脹相が離れた後、虫の息の虎杖を2つの人影が見下ろしていた。
「いた」
「生きてる……よね?」
「うん、始めるよ」
虎杖の目の前に立っているのはセーラー服を着た少女2人、B5Fから上がってきた美々子と奈々子だった。