第18章 無垢なる贄と仮初の平穏と
「オマエら、ボクの“しゃれこうべ”を壊したな!許さない、許さない許さない!!」
「くっ!?」
激昂した白稚児がなずなの胸ぐらに掴みかかる。
マーキングの影響で咄嗟に動けなかったなずなは容易く捕まってしまい、そのまま白稚児と共に結界外へ出た。
出た先は村の神社ではなく、細い木々が並ぶ森の中。
ここはどこ?と疑問に思う前になずなの耳に聞き慣れた声が届く。
「出てきた!アイツが呪霊か!?」
「間違いなく一級呪霊でしょ!絶対に祓うわよ!」
虎杖くんと野薔薇ちゃんだ!
呼びかけようとしてなずながそちらを向こうとしたら、冷たい感触に首を固定された。
「動くな。コイツがどうなってもいいの?」
白稚児がなずなの首に手を回し、鉤爪を喉に当てている。
虎杖達が少しでも動いたら掻き切るつもりだ。
野薔薇のきつい舌打ちが聞こえてくる。
懸命に視線を向けると虎杖が悔しげに歯噛みした顔も見える。
しかし、なずなだってただ人質に甘んじる気はなかった。
結界から出たということは、なずなは白稚児の術式を中和する必要がなくなったということ。
そして中和に回していた鬼切の呪力を身体強化に使えるということ。
「っ、やあっ!」
白稚児の心臓を狙って鬼切を繰り出す。
鬼切は白稚児の胸部を貫くが、心臓からわずかに逸れ、致命傷には至らない。
あともう一息なのに……!