第18章 無垢なる贄と仮初の平穏と
「んじゃあ気を取り直して……どうする?」
野薔薇がひとつ手を叩き、虎杖と伏黒を見る。
「殴ってもダメ、切ってもダメ、潰してもダメだろ?他に何か……あっ!銃で撃ってみるとか?」
村人が猟銃を持っていたことを思い出した虎杖が閃くが、すかさず伏黒が口を挟む。
「奪った銃はあるが、散弾だぞ?もし銃が効かなくて跳弾でもしたら俺達が危険だ」
「ダメかぁ……」
「発砲音で村にも気づかれるしな。確実に壊せるならともかく、不確実なこの状況では使えねぇ」
3人が思いつく限りで一番強力なのは五条に破壊してもらうことだが、あいにくこの場にいない。
いまひとつな案を出してはああでもない、こうでもないと唸る虎杖の隣で、伏黒は生贄の儀式の手順を思い出していた。
……生贄ヲ社ノ舞台ニ上ゲ 火ヲ以ツテ捧ゲ奉ル……
白稚児の張る結界は儀式時に最も弱まり、火に呼び寄せられた白稚児が村に出現すると消え、生贄が取り込まれると再び展開される。
その白稚児と深く結びついている“しゃれこうべ”は、似た性質を持っているのではないか?
自分達がとり得る手段で最も効果的と思われるものは……
考えながら“しゃれこうべ”の巾着袋の口を閉める。
「……燃やしてみるか」
「どういうこと?」
「これが呪霊と強く繋がってるなら、燃やせば守りが揺らぐ可能性はある」
生贄の儀式は榊あるいは生贄に火をつけることで呪霊を呼び、呪霊出現と同時に村の結界も消えた。
“しゃれこうべ”にも村の結界と同じような守りが働いているのなら、火が何らかのトリガーとなることは十分に考えられるのだ。
淡々と説明する伏黒に虎杖はニッと笑った。
「やっと冷静な伏黒が戻ってきたな!」
「悪かったな、いちいち蒸し返すな」
「そうと決まればさっさとやるわよ!」