第18章 無垢なる贄と仮初の平穏と
伏黒が村人を拘束している隙に祠に到着した虎杖と野薔薇。
こぢんまりとした祠の扉は閉ざされていたが、野薔薇が躊躇なく開け放つ。
中には古めかしい巾着袋が小さな座布団の上に鎮座していた。
巾着袋からは呪力も感じる。中身が呪物である証拠だ。
「これね」
巾着袋を開けると、中身は黒ずんだ頭蓋骨だった。
野薔薇でも片手で余裕に持てそうなサイズなので、おそらく子供のものだ。
なぜ子供の頭蓋骨が呪物になったのか……
ろくなことではないというのは想像できるが、今は置いておく。
中の頭蓋骨には触れないよう注意して地面に下ろし、野薔薇は五寸釘に呪力を篭め、金槌で力一杯打ち込んだ。
「共鳴り!」
しかし、ガキィンと硬質な音と共に釘が弾かれた。
呪物自体が硬いのか、伏黒が推測したようにこの頭蓋骨の形に沿って強力な結界が張られているのか。
いずれにせよ、一定程度ダメージを与えないと共鳴りで破壊できない。
舌打ちした野薔薇を見て、虎杖もそれを感じたのか、野薔薇の肩を叩いた。
「釘崎、ちょっとどいてろ。俺がやる」
「完全にブッ壊すんじゃないわよ」
「分かってるって」
野薔薇の忠告にうなずき、拳を振り下ろす。
共鳴りよりも数段威力が出る……はずなのだが、
「嘘だろ、クッソ硬ぇ!」
虎杖はジンジンと痛む手をさすり、思わず悪態が出た。
“しゃれこうべ”の方は何事もなかったかのように傷一つない。
ならば、と今度は壊すつもりで思い切り殴りつけるが、結果は同じ。
角度を変えて殴っても、地面に叩きつけても、直接金槌で打っても壊れそうな手応えや気配がまるでない。
「……どうやって壊そう?」
「知らないわよ……」
これは詰んだかもしれないとお互い気まずそうに顔を見合わせた。