第18章 無垢なる贄と仮初の平穏と
もう何時間も経ったようで、まだ10分も経っていないような……
なずなの時間感覚は既に麻痺していた。
自分の手に浮かぶ鎖の紋様は、この結界に引き込まれた時と比べて濃くなってきている。
白稚児の術式が中和しきれず、徐々に、だが確実に身体が重くなっている。
しかも術式を中和し始めた時からか、身体強化がうまく発動せず、なずなは肩で息をしていた。
そんな中でも白稚児に少しでもダメージを与えられないかと試みているが、どれもまるで効果がない。
嫌気が差してきそうだった。
対峙する白稚児は片目をすがめて、口を尖らせている。
「効きが悪いねぇ、そろそろ馴染んでもいい頃合いなのに」
「効き?」
「そう、普通の人間ならもうとっくに魂が出てきてるよ。肉殻の重みで動けないはずだし……なんでオマエはそうならないの?」
首を傾げた白稚児には傷ひとつなく、呪力が削がれた気配もない万全の状態。
一方なずなは白稚児の術式に身体を蝕まれ、時間が経過するほど満足に動けなくなっていく。
この状況で先程の白い幼子達の声に反応していた膨大な呪力が襲ってくるようなことがあれば、なずなは容易く潰されるだろう。
白稚児にそういった攻撃能力がないことを祈るばかりだ。
早く決着をつけなければならないのに、全くダメージを与えられない状況。
1人ならとっくに心が折れていた。
でも……