第18章 無垢なる贄と仮初の平穏と
口論になりそうなところで、伊地知の冷静な声が割って入ってきた。
「確認ですが、祠までの道は車が通れる幅がありますか?」
「あっ……」
そういえば祠までは舗装されていない道だ。
二輪車なら通れるだろうが四輪車は木が邪魔で入れない。
「木を薙ぎ倒して行く、とか?」
「細い木でも数がまとまれば車を止めるのには十分です。ショットガンを持った村人の目の前で立ち往生するわけにはいかないですし、車は難しいですね……」
「じゃあどうすんのよーっ!?」
生身でも車でも近づけないという八方塞がり状態に野薔薇は頭を抱えた。
そんな野薔薇の横で、伏黒は顎に手を当てて何やら考えている。
「……渾で全員の銃を取り上げる。村人には式神が見えないだろうし、もし見えたとしても呪力の篭ってない銃弾は式神には効かねぇしな」
「おおっ」
「銃を奪ったら虎杖と俺で突入して、村人を捕まえると同時に“しゃれこうべ”を壊す」
「私をハブるんじゃないわよ。“しゃれこうべ”は私が共鳴りで破壊するわ。その方がなずなにすぐ伝わるし、呪霊にもダメージが入るだろうしね」
「分かった。なら破壊は釘崎に任せる。俺と渾で村人は押さえるから、虎杖も祠へ直行しろ」
「なんで?」
疑問符を浮かべた虎杖に伏黒が付け加える。
「白稚児と“しゃれこうべ”に繋がりがあるなら、“しゃれこうべ”が壊されないよう結界が張られてる可能性もあるからな。もしそうだったらオマエが結界を割れ」
銃さえ取り上げてしまえば術師でもないただの人間だ。
伏黒と式神だけで確保できる。
それよりもあまり情報がなく、不測の事態が予想される“しゃれこうべ”の方に戦力を割くべきだ。
「ボサっとしてんじゃねーよ!さっさと行くわよ!」
歩きながら話せと言わんばかりに野薔薇は先へ行ってしまい、虎杖と伏黒も後を追っていった。